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学園でのパーティーから帰った千夜呼は、小羽都家のベランダで
空を見ていた。
「ただいま。」
「あ、鷹栖さんオカエリナサイ。」
「その望遠鏡どうした。」
「七尾さんがプレゼントしてくれました。」
「そりゃよかったな。パーティー楽しかったかい?」
楽しかったです、と笑う千夜呼の瞳の色に陰りがあるのを
鷹栖は見逃さなかった。
「したら、なしてそんなカオしてるんだべさ。」
そう言って、千夜呼の頭をぐしゃぐしゃと撫でてやると
伏し目がちに、千夜呼がつぶやいた。
「楽しければ楽しいほど、今日が終わるのが寂しくてコワイです。」
鷹栖は、横に控えていた慶に視線を移す。
人はこういうだろう、また会えるじゃないかと。
けれど、自分達はその『また』が、必ずしも訪れるものではない事を
よく知っていたから……。
「来年はちゃこから誘おうって、また一緒にクリスマスしようって
去年は思ってました。でも、燵也さん、いません……。
慶おにぃちゃんだって、そう。だから来年…もしかしたらって…。」
千夜呼の頬を撫でる慶の手に、体温はない。
それでも千夜呼はその手を、まるですがりつくように掴んだ。
「生きるってのは、何かを…誰かを少しずつ置きざりにしていくって
事なのかもしれんなぁ。」
「……っ。」
「俺だって、嫁さんとの事を全部覚えてるわけでない。過去に置いてきた
思い出はわんさとある。おめーはそんな俺を、冷たい人間だと思うかい?」
「…いいえ。」
鷹栖は服の袖で千夜呼の涙をぬぐってやると、微笑んだ。
まるで昔の自分を見ているようだと、思っていた。
「でも、楽しい事とか、いい事だってあったんでしょや今日。」
「はい、ありました。ずっと…嫌われてるって思ってたヒトが
別にちゃこのこと嫌ってないって言ってくれたんです。」
泣いていた千夜呼がここで、やっと笑顔を取り戻した。
千夜呼は慶が戻ってきてから、初めてキチンと笑えるようになった。
張り付いたような笑顔ではなく、ちゃんと、心から…。
「良かったな、他には?」
「ガムテープで、あーちゃんのスネ毛をむしって遊びました。
あれはなかなか……色んな意味で面白かったわ…。」
月明かりの中、妖しく光る千夜呼の月色の瞳を見て
鷹栖と慶は、思わず千夜呼から一歩退いた。
それが現役自衛官としての、スカルロードとしての勘かと聞かれたら
全くそんな事はないわけだが――。
空を見ていた。
「ただいま。」
「あ、鷹栖さんオカエリナサイ。」
「その望遠鏡どうした。」
「七尾さんがプレゼントしてくれました。」
「そりゃよかったな。パーティー楽しかったかい?」
楽しかったです、と笑う千夜呼の瞳の色に陰りがあるのを
鷹栖は見逃さなかった。
「したら、なしてそんなカオしてるんだべさ。」
そう言って、千夜呼の頭をぐしゃぐしゃと撫でてやると
伏し目がちに、千夜呼がつぶやいた。
「楽しければ楽しいほど、今日が終わるのが寂しくてコワイです。」
鷹栖は、横に控えていた慶に視線を移す。
人はこういうだろう、また会えるじゃないかと。
けれど、自分達はその『また』が、必ずしも訪れるものではない事を
よく知っていたから……。
「来年はちゃこから誘おうって、また一緒にクリスマスしようって
去年は思ってました。でも、燵也さん、いません……。
慶おにぃちゃんだって、そう。だから来年…もしかしたらって…。」
千夜呼の頬を撫でる慶の手に、体温はない。
それでも千夜呼はその手を、まるですがりつくように掴んだ。
「生きるってのは、何かを…誰かを少しずつ置きざりにしていくって
事なのかもしれんなぁ。」
「……っ。」
「俺だって、嫁さんとの事を全部覚えてるわけでない。過去に置いてきた
思い出はわんさとある。おめーはそんな俺を、冷たい人間だと思うかい?」
「…いいえ。」
鷹栖は服の袖で千夜呼の涙をぬぐってやると、微笑んだ。
まるで昔の自分を見ているようだと、思っていた。
「でも、楽しい事とか、いい事だってあったんでしょや今日。」
「はい、ありました。ずっと…嫌われてるって思ってたヒトが
別にちゃこのこと嫌ってないって言ってくれたんです。」
泣いていた千夜呼がここで、やっと笑顔を取り戻した。
千夜呼は慶が戻ってきてから、初めてキチンと笑えるようになった。
張り付いたような笑顔ではなく、ちゃんと、心から…。
「良かったな、他には?」
「ガムテープで、あーちゃんのスネ毛をむしって遊びました。
あれはなかなか……色んな意味で面白かったわ…。」
月明かりの中、妖しく光る千夜呼の月色の瞳を見て
鷹栖と慶は、思わず千夜呼から一歩退いた。
それが現役自衛官としての、スカルロードとしての勘かと聞かれたら
全くそんな事はないわけだが――。
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御紹介
名前:
異空 千夜呼
生誕:
1991/11/11
過去録