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『気分を変えたい…』

そんな何気ない千夜呼の独り言に、付き合おうと名乗りを上げたのは
汐儀・偃鴉(しおのぎ・えんや)、その人だった。

和服を好む二人はこの日、初めて白と黒の軍服に身を包み
紫刻館へと赴いたのだった。


偃鴉は、一見するととても穏やかな雰囲気を持っているが
どこか飄々としており、心に大事な何かを秘めている様で…。

千夜呼はそんな偃鴉と、何か通ずるものを感じたのか
いつからかよく懐き、話をする間柄になっていった。




「一寸、休憩しない?」
「…そう、ね。」

ゴーストを一掃し、静けさを取り戻した紫刻館の一室。
そこで二人は、暫し身体を休めることにした。

燭台に火を灯すと、ぼんやりとした明るさに包まれる。
そこには二人掛けのソファが一つ、ぽつんと置かれていた。

千夜呼は腰に装着していた乗馬鞭で埃を軽くはたくと
一人分のスペースを残し、気だるい表情で腰を下ろした。

「…鞭持ちながら疲れた顔してるの見ると、何かいかがわしい
 想像してしまうなぁ…。」

偃鴉は真面目な顔でそんな台詞を言うと、静かに千夜呼の隣へ
腰を下ろした。

「いかがわしい汐儀さんにそんな事いわれるなんて、光栄だわ…。」
「光栄なのか其れ…。」

薄暗い部屋、ヴェルヴェットのカーテン、狐火の様な炎。
部屋の雰囲気のせいだろうか。
クスリと微笑む瞳や唇は、普段より妖艶に見えた。

自分の事を純潔な方だと思っていたのに、と反論しつつ
偃鴉もつられて小さく笑い返した。

言葉や口調と裏腹な、偃鴉の眼鏡の奥の瞳を、千夜呼はどこか
虚ろな目で見ていた。

「ほんと、ヘンなヒトね…。」

それは決して、否定的な物言いではなかった。
偃鴉の組んだ足に上半身の体重を預けたのが、何より証拠だ。


「ねぇ、だけど落ち着くの……だからワタシ、アナタ好きよ?」

ふいに千夜呼が、そんな事を口にする。
それはどこか、すがりついてくる子供の様にも見えた。

「…いやま、俺も異空好きだけどね? さらっと云われると
 照れる暇が無いな。」

冗談めいて、そんな台詞を吐く偃鴉の手が、膝の上の千夜呼の
長い髪に伸ばされた。

『…触らないで頂戴。』

いつもの調子で、そんな言葉が飛んでくるものかと思われたが
意外にも抵抗する素振りも見せず、されるがまま…。

そんな彼女を見ていると、これは幻で、ふぅっとこのまま
消えてしまうのではないか、そんな錯覚さえ覚えてしまう。


当の千夜呼はというと、体温を頬で、腕で確かめながら
『好きだけどね』
先ほどの、その言葉を反芻していた、何度も…。

「……そう……有難う。」
「…ん?」
「あり、がと……。」
「…眠いの?おやすみ?」

何か…思い詰めた様な表情をした後、千夜呼の黄金の瞳は
目蓋に覆い隠されてしまった。

この束の間の休息で、千夜呼が何を想い、思ったのか。
それはもう、誰にも分からない…。


仮初めの温もりと、仮初めの夜の中。

偃鴉は小さな吐息を聞きながら、千夜呼が黄金の瞳で再び
この哀しく歪んだ現実の世界を見るその時まで
静かに時を共にした。


偃鴉の細い指と指の間を、すり抜けてゆく黒髪。
まるで砂の如く、遠い日の幸せだったあの日々の如く
いとも簡単に、さらさらと……さらさらと…………。

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この作品は、株式会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』の
世界観を元に株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
イラストの使用権は作品を発注した異空・千夜呼に
著作権はANO候補生様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが
所有します。

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発注、RPにお付き合いくださった汐儀PL様には
心からの感謝を……。
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御紹介
名前:
異空 千夜呼
生誕:
1991/11/11
御言葉
[09/19 BlackMan]
[09/02 香住]
[08/27 健斗]
[08/03 あー]
[08/01 香住]

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