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黒い方の千夜呼でいると
なにか解放された気分になりました、楽でした。
でも黒い方の千夜呼では
誰かと一緒にいるには無理がありました。

人様に迷惑をかけてはいけないって、じっちゃんが言ってました。
チャコは忘れてしまっていたですね…ごめんなさい。

急にコトバを話すのが、恐くなりました、苦しくなりました。
幸い、この場所や、こりすちゃん先輩の所。
二つもチャコに許されたシェルターがありました。
二つもあればじゅうぶんですね。


チャコがチャコだけでいられた日々はもう遠く
みんなと楽しくお話できた思い出もまた遠く…。


胸の中の宝箱に仕舞って、チャコはサヨナラです。
今のチャコ、もう昔のチャコじゃないんです、戻れないんです。
戻りたかった、いつか戻れるって信じたかったけど。

迷惑かけた全ての人にごめんなさい、さようなら、そしてありがとう。
チャコは明日もどこかで、ひっそり生きています。

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今宵の満月はキレイ。
人を狂わせる月が、ワタシはとてもスキ。


自然と足はヨンロク号の方へ向かっていた。
頬を撫でる夜風が心地いい。
空を見上げて歩いていると、ふいに後ろから名前を呼ばれた。

「あ……鷹栖、さん?」

こりすちゃん先輩のお父さんでした。
背が高くてかっこよくて男らしい、航空自衛隊員の鷹栖さん。
仕事帰りでしょか、タバコを咥えたままこっちへ走ってきました。
「こんばんはです。」
「こんばんは…って、おめー何してるんだべさこんな時間に、危ねーべや。」
「えへへ、ちょっと用事があったですよ。」
「それはどーーーーーっしても行く必要あるんかい?」
「あう……そういうワケではないでスが。」
「うし、じゃあ帰んべや。送ってくから。」
有無を言わさず、結局家へ強制送還される事になってしまいました。


「鷹栖さんタバコ吸うんですね、知りませんでした。」
「うん、けどうちのお姫さんがうるさいんだわ、だから秘密な?」

そう言って笑う鷹栖さんは、まるでいたずらっ子みたいでした。
師匠いわく、自衛隊では結構エライ立場の人で
"鬼鷹"なんて言われる位コワイ人らしいんですけど
こりすちゃん先輩やチャコには、本当に優しくて…。

チャコからみれば非の打ち所のないヒトですけど
こりすちゃん先輩は『なまらだらしないよ!』って言ってました。



二人で並んで、ゆっくり歩きました。
満月のせいでしょか、大人で器が大きいヒトだからでしょか。
気がついたらチャコは、慶お兄ちゃんの話をしていました。
奥さんを亡くした鷹栖さんなら、解ってくれるかも知れない。
この胸の、忘れられない、消えない痛みを…。


鷹栖さんは相槌を打って、静かに聞いてくれました。

「俺と千夜じゃ状況も立場も違うから、全部はわかってやれんけど…。」
そう言って、チャコの頭を抱き寄せて、撫でてくれました。

「よく頑張って生きてきたなぁ……えらいぞ千夜。」

そう言われて、涙があふれて止まらなくなりました。
生きてきた事を褒められたのは、初めてでした…。
鷹栖さんの服からはタバコと、かすかに香水の匂い。

「もし今後、千夜に好きな奴が出来て、そいつも千夜の事好きになってくれたら
 ちゃんと前に歩きだしなや、それは悪いことじゃねぇから。」
「………はい、鷹栖さんは?」
「俺か?俺はお姫さん一人ですでに手がいっぱいいっぱいだべさ。」
「ふふ。」
「千夜の事も娘みたいに思ってるし、虎も息子みたいなもんだ。」

とっても嬉しかったです。
こりすちゃん先輩に悪い気がして
お父さんって呼ぶことは出来ないですけど。

「チャコ、鷹栖さんの事ダイスキです。」
「だっはっは、そりゃありがとうな!」
「チャコ、鷹栖さんのお嫁さんになりたいでス!!」
「でっ?!いやーそりゃ嬉しいけど、おっちゃん警察につかまっちまうべや…。」
「淫行自衛隊員、って師匠が言ってました。」
「あ…あんのクソバカガキ………殺す!!!」
「ふふ。」



月がさっきよりキレイに見えます。
月も、空も、星も、みんなみんな…。

服の袖をつかませてもらって歩きました。
こんな風に誰かに寄りかかって歩いたのは、何年ぶりでしょか…。
援交オヤジと間違われねぇかな、って鷹栖さんはちょっと焦ってました。
鷹栖さん、全然20代に見えるからダイジョウブなのに。

「また、お話できますか?」
「当たり前しょや、携帯教えるからいつでもかけてきなや。」
「えへへ、はい。」


こんなお父さんがいるこりすちゃん先輩が、とっても羨ましいです。

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ちょっと久しぶりに師匠の家に遊びに行きました。
おばさんとおじさんに挨拶して、お部屋に行ってみると
師匠は譜面を持ったまま、眠ってしまっていました。

「師匠、また上半身裸……風邪ひくですよ。」

掛け布団をかけてあげようとしたその時
ごろんと寝返りをうって、師匠が背中を向けました。



その背中は、傷だらけでした。満身創痍です。
全てがおそらく、古傷です。
切り傷や………タバコを押し付けられた痕…。
普段の師匠が決して見せない、辛い過去の影。




「虎太郎ちゃん………お疲れ様…。」

チャコはそっと、師匠の身体に布団をかけて
起きるまで、ただ側にいましたです。

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学校からの帰り道。
『浮気じゃねぇ!股かけてんだ!!』っていうのは
凄い名言というか、むしろ潔すぎて男らしいでス!とか思いつつ
バイトまで時間があるので、のーんびり歩いて帰りました。
少しだけ、数分だけ、カフェにも寄りました。
だからチャコは今日、頑張ったのです…。


ちょうど商店街にさしかかったとき
聞きなれた可愛らしい声が耳に入ってきました。
こりすちゃん先輩が、八百屋さんでネギをねぎってましたです。
……ダジャレじゃないでス…。

「あ、チャコちゃんだ!今帰りかい?」
「はいです。こりすちゃん先輩はひとりでスか?」
「うん、虎ちゃんならバンドの練習あるからって先帰ったよ。」
「バンド活動だけは熱心ですねぇ師匠。」

ネギをねぎった(もう一度言いますけどダジャレじゃないんです)
こりすちゃん先輩と、一緒に帰ることにしました。
音楽の話や学校の話、進路の話。
この間ヨンロクで見た金髪の男の子についても聞いてみました。
彼氏じゃなくて結社のお友達だそうです。
…でもあえてこの事実は師匠に内緒にしておくですよ…ふふ。


途中、こりすちゃんが何か言いたそうに
じーっとチャコの顔を見上げていたので、どうしたのか聞いてみました。


「あのね…虎ちゃんのバンドメンバーの、タク君って覚えとるかい?」
「……………はて?」
「赤いツンツン髪で身長が低めで、高校2年生の…。」
「ああ、思い出しました。あのおサルさんみたいな!」
「さ、さる……うん…そう、だけど。」
「おサルさんがどうかしましたですか?」
「んとね、チャコちゃんの事なまら気に入ってて…そいでね?
 ……虎ちゃん抜きで会いたがってるんだわ、チャコちゃんと。」
「はぁ…いったい何用でしょか、師匠を差し置いて弟子にだけなんて。」
「野暮天だにゃー!そんなんチャコちゃんが好きだからに決まってるしょや!」
「…それならお断りするです。興味ないでスから。」
「え、え…でも、まだちゃんとお話もしてないしょや?」
「話さなくても解ります、おサルさんを師匠より好きになる気がしませんから。」
「そ、それって…虎ちゃんの事がすき……ってことかい?」
「はい。」
「じゃあ!虎ちゃんとお付き合いとかしちゃうかい?!」
「ないですねぇ、それは絶対。」
「うーん……チャコちゃんと虎ちゃんの関係ってつくづく不可解だべさ。」
「いたって単純明解でスよ?こりすちゃん先輩が鷹栖さんをスキなのと一緒です。」
「鷹栖さんって……あたしのおとーさんかい?」
「はい、おじさんって呼ぶには若くてステキすぎるので、なんて呼んだらいいですかーって
 この間聞いたら"じゃあ鷹栖って呼びなや"って言ってくれましたです!」
「お、おとーさん……なんかナンパっぽいべさ。」
「かっこいいでスよねー鷹栖さん!ちょっとどこか信長様ちっくです!」
「おとーさんみたいなのが好きなんだったら…タク君は無理だろうにゃー…。」
「あ!今日、鷹栖さんお家いますか?」
「うん、早く帰るって言ってたけど。」
「遊び行ってもいいですかっ?!」
「うん、ええよー。」
「じゃあ!お家かえって着てきます、関西さんにもらったメイド服!!」
「え、えぇええ?!ななななんでだべさ?!」
「この間、鷹栖さんと約束したんです!今度はメイドでって!!」
「お……おとーさんのおたんちーーーーーーん!!!」


鷹栖さんには、それはもうとっても喜んでもらえましたけど
こりすちゃん先輩のオーラが尋常じゃなく黒かったです。



↑差し入れを買って小羽都家へ向かうチャコ。

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elouai's doll maker 3elouai's doll maker 3elouai's doll maker 3
ダークサイド千夜呼 → 千夜呼 → 覚醒前千夜呼

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御紹介
名前:
異空 千夜呼
生誕:
1991/11/11
御言葉
[09/19 BlackMan]
[09/02 香住]
[08/27 健斗]
[08/03 あー]
[08/01 香住]

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