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何度目だろうか、この『画』を見るのは…。
静かに雨降る丑三つ時。
ヨンロク号の中には、雨音だけが響いている。
虎太郎は静まり返った廊下を歩いていた。
転々と落ちている赤い雫が、彼女の居場所を報せてくれる。
静かに雨降る丑三つ時。
ヨンロク号の中には、雨音だけが響いている。
虎太郎は静まり返った廊下を歩いていた。
転々と落ちている赤い雫が、彼女の居場所を報せてくれる。
やがて、とある一室の前で足を止めた。
少し開いていた扉を開けると、ギッと錆付いた音がした。
玄関近くには幾多のゴーストの屍骸。
それらは全て、玄関口へ向かっており
『部屋の中に居たゴーストが、侵入者を排除しようとした』事を
物語っている。
「…まるで強盗に押し入られたみてーだな。」
虎太郎がそうつぶやいた瞬間、雷鳴が部屋を照らし
一つの人影を浮かび上がらせた。
手に握られた武器は、酷く無骨で凶悪。
真っ赤な血が、ポタポタと滴り落ち、床を汚していく。
美しい鈴蘭の描かれた振袖もまた、赤く染まっていた。
「気は済んだか?」
虎太郎が足でゴーストを押しのけながら、問うと
それまで微動だにしなかった影が、ゆらり揺れた。
2度目の雷鳴。
こちらを向いたのは少女。
人形のように冷たい瞳、無感情な瞳。
けれどその瞳から、一筋の涙…。
帰るぞ、虎太郎がそう告げ手を出すと、少女は
覚束ない足取りで近寄り、その手を取った。
少女の居た部屋には、幸せそうな夫婦の写真が一枚
残されていた――。
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御紹介
名前:
異空 千夜呼
生誕:
1991/11/11
過去録