逢瀬

「…、…。」

「なに…。」

「…、…。」

「けい…おにぃちゃん？」

「…、……。」

「いいえ、いいえ！でもあいたかったです、とってもとっても！」

「…………。…、………？」

「えと………わかりま、せん。」

「……？」

「…はい、それは、とっても……。」

「……、……………、…………。」

「１１月１１日？ちゃこの、おたんじょうびですか？」

「…、……………。………………。」

「はい、わかりました。」

「……、…………？…………。」

「はい、そのときは、あのばしょにきます。」

「………。」

「はい。けいおにぃちゃん、おやくそくです。」





気が付いたら、おうちでした。
岩手の、じっちゃんと暮らしたおうちでした。
慶おにぃちゃんと、約束しました。
慶おにぃちゃん、寂しそうでした。
でも逢えて、お話できて、純粋に、ただ嬉しかったんでス。

お約束、守ります、今度は、必ず………、必ず。

混ざり合って溶け合う魂

「気ィついたか、気分どうだ？」
「……ワタシ…。」
「もしかして、いんじゃねーかなって見に行ったヨンロクで
　案の定ぶっ倒れてたんだよ、お前は。」
「…そう。」
「いつからあそこにいた？」
「…２日前。」
「はーー、どーりでどこ探しても見つかんねーわけだ、このアホ。」
「放っておいて…。」
「はいはい、ほらよ。飲め。」
「……ホットミルク…。」
「里栖がくれた北海道の旨い牛乳、高級品だぜ？」
「………。」
「うめーか？」
「…………おいしい。」

口の中に広がる甘ったるいミルク、久々に口の中に血以外の味がした。
湯気の上る温かなミルクを見つめていたら、虎太郎が服の袖を
ごしごしワタシの目に擦り付けてきた。

「痛い、何？」
「お前・・・・自分が泣いてんの、気付いてねーのかよ。」

水滴が落ちて出来た純白のミルククラウン。
嗚呼、ワタシ………泣いていたんだ。

自分が泣いてるのか笑ってるのか、分からなくなっていた。
鏡で見る自分の顔は、昔と変わらぬ笑顔に見えた。
だけどみんな、口をそろえて言うの。

『　お　前　は　笑　え　て　な　ん　て　い　な　い　』

どうやって微笑うんだった？
どうやったら微笑えるんだった？
もう、わからない…。

「…かえりたい。」
「・・・・んな寂しいこと言うなっつの。」

虎太郎はきっと分かっている。
帰りたいと言った先が、家ではない事を。

「なんか食うか？肉買ってきてやんぜ？」
「いらない。」
「そっかよ。」
「なんにもいらないから、このまま眠っても…いい？」
「おう、泊まってけや。」
「…うん。」
「久々に一緒に寝んべ？」
「………うん。」

悪い夢を見ては泣くワタシを、なだめてくれたのは
いつだって師匠だった。
唯一ワタシの罪を、総てを許してくれる存在のような気がした。
突き放したりしない、叱ってくれる、だけどちゃんと撫でてくれる。
泣きたくなるほど甘いアメとムチ。
師匠はワタシの兄、父親、トモダチ、半身、魂の片割れ…。

「同じユメ、みるの…。」
「んー？」
「何度もね、見るユメがあるの。岩手の、家の前の林にいるユメ。」
「一人でか？」
「うん。雪、たくさんつもってて、白銀の世界に抱かれて眠るユメ…。」
「・・・・寒ぃよ。」
「寒くないの、あったかいの、ワタシ幸せなの……とっても…。」


そこでワタシの記憶は途切れた、甘い睡魔に負けたのだ。
今宵もまた、あの夢が見られればいい。
怖い夢だけはどうか…見ませんように……。







「それがお前の・・・・幸せかよ、畜生。」

××バレンタイン

「離れたくないから、死にたくない。」

　　　「離れることになっても、死なせたくない。」



決定的に違うこの二つの想いが、二人の世界を永遠に切り離した。
ワタシはあまりに幼稚で、自己中心的だったのだ…。


ゴーストをいくら殺しても、あの人は戻らない。
狂ってゆく精神の中でワタシは、あと何度微笑む事が出来るだろう。

ねぇ、だけどね？
アナタを愛さなければ良かったなんて思った事
ただの一度だって無いんでスよ？





ワタシが潰れきるまで　あと　　　日。

こころのなかで

カミサマ

チャコは

「　　　　」でス…。

カケラ探し

あの日、粉々に砕け散った想いのカケラを
拾い集めて、結んで繋いだ。

このカケラは確かに、あの時のものなのに
どうして元通りにならないの？

カケラが足りないんだわ、きっとまだあるのよ。
ワタシは必死で残りのカケラを探した。

やっとの事で見つけたカケラを、掌に乗せた。
するとそれは瞬く間に溶けて……涙となってしまった。


もう二度と、元には戻らない。
わかっていたのに……。




遠い昔の哀しみさえも愛せたなら
ワタシはきっと　　　　に…なれる。

想空

スキ…ダイスキ…ホントは、ホントに……。

声にならないこの想いは、届かないのでしょうか？

嗚呼…。

どんなに深く想っても、この気持ちを無かった事にされるのなら

いっそワタシという存在ごと、無かった事にしてくれれば良いのに…。




届かないと知って、尚更この手をのばした。

夜空に瞬く星をつかもうとする気持ちに似ていた。



今宵も漆黒の闇に堕ちていく。

引きずり込まれて逝く、深く、不可く……。


誰かが、何処からか、ワタシを呼ぶ声がする。

アナタは誰？

何処にいるの？

アナタがワタシを愛してくれるヒト？

アナタがワタシをこの地獄から救ってくれるヒト？


いつまで耐えられるか分からないの、もう…。

だからはやく、ワタシを、　　　　　　　して　　　　？