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「気ィついたか、気分どうだ?」
「……ワタシ…。」
「もしかして、いんじゃねーかなって見に行ったヨンロクで
 案の定ぶっ倒れてたんだよ、お前は。」
「…そう。」
「いつからあそこにいた?」
「…2日前。」
「はーー、どーりでどこ探しても見つかんねーわけだ、このアホ。」
「放っておいて…。」
「はいはい、ほらよ。飲め。」
「……ホットミルク…。」
「里栖がくれた北海道の旨い牛乳、高級品だぜ?」
「………。」
「うめーか?」
「…………おいしい。」

口の中に広がる甘ったるいミルク、久々に口の中に血以外の味がした。
湯気の上る温かなミルクを見つめていたら、虎太郎が服の袖を
ごしごしワタシの目に擦り付けてきた。

「痛い、何?」
「お前・・・・自分が泣いてんの、気付いてねーのかよ。」

水滴が落ちて出来た純白のミルククラウン。
嗚呼、ワタシ………泣いていたんだ。

自分が泣いてるのか笑ってるのか、分からなくなっていた。
鏡で見る自分の顔は、昔と変わらぬ笑顔に見えた。
だけどみんな、口をそろえて言うの。

『 お 前 は 笑 え て な ん て い な い 』

どうやって微笑うんだった?
どうやったら微笑えるんだった?
もう、わからない…。

「…かえりたい。」
「・・・・んな寂しいこと言うなっつの。」

虎太郎はきっと分かっている。
帰りたいと言った先が、家ではない事を。

「なんか食うか?肉買ってきてやんぜ?」
「いらない。」
「そっかよ。」
「なんにもいらないから、このまま眠っても…いい?」
「おう、泊まってけや。」
「…うん。」
「久々に一緒に寝んべ?」
「………うん。」

悪い夢を見ては泣くワタシを、なだめてくれたのは
いつだって師匠だった。
唯一ワタシの罪を、総てを許してくれる存在のような気がした。
突き放したりしない、叱ってくれる、だけどちゃんと撫でてくれる。
泣きたくなるほど甘いアメとムチ。
師匠はワタシの兄、父親、トモダチ、半身、魂の片割れ…。

「同じユメ、みるの…。」
「んー?」
「何度もね、見るユメがあるの。岩手の、家の前の林にいるユメ。」
「一人でか?」
「うん。雪、たくさんつもってて、白銀の世界に抱かれて眠るユメ…。」
「・・・・寒ぃよ。」
「寒くないの、あったかいの、ワタシ幸せなの……とっても…。」


そこでワタシの記憶は途切れた、甘い睡魔に負けたのだ。
今宵もまた、あの夢が見られればいい。
怖い夢だけはどうか…見ませんように……。







「それがお前の・・・・幸せかよ、畜生。」

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御紹介
名前:
異空 千夜呼
生誕:
1991/11/11
御言葉
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