手繰る糸

　忘れられないのが苦しいんじゃなくて
　忘れてしまうのが苦しいんです

それはとてもとても、その通りなのです。

だから苦しくても、どんなに痛くても、辛い事でも
必死で、闇へ沈んでしまいそうな記憶を手繰り寄せて
掘り返し続けているんです。

何度も何度も、血だらけになっても、この手で…。


だからチャコは忘れない、忘れなくて済む。
いつか思い出さなくなって、現状だけしか見えなくなって
ヘラヘラ笑うチャコになんて、なりたくない。
そんな幸せなら、いりません。

代償に、色んなヒトを思い出せなくなってしまったけれど
それでもいい、色んなヒトに自分を忘れられてもいい。

あのヒトの笑顔を思い出せなくなるくらいなら…。